喘息と先生とセリカ2000GTリフトバック
私は幼い頃から小児ぜんそくだったので、両親は私を常に医院に連れて行っていた。
夜中にタンが喉に詰まって呼吸困難になることも、しばしばあったので両親は大変だったと思う。
私の喘息を治すために車で1時間もかかる病院まで通ってくれたこともあった。
喘息だったせいか、風邪もよくひいた。
風邪をひくとピンク色をした水薬をよく貰ってきてくれた。
それが甘くて美味しくて、風邪を引くのも楽しみだった。
姉は健康だったので、私がピンク色の薬を飲んでいるのが羨ましかったようである。
近隣で一番近い医療施設は車で10分ほどの場所にあり、私の主治医が経営する医院だった。
母と連れ立って行くと先生は「坊主また来たか~」と言って私を和ませてくれた。
先生の腕はごつくて毛むくじゃらで、触診の時にグイグイ押してくるので、ちょっと怖かった。
診察の後は決まって吸入器で白い蒸気を吸っていた。
医院の玄関には、先生の愛車、TOYOTAセリカ2000GTリフトバックが駐車してあった。
私は車が大好きだったので、先生の愛車を見たいがために、診察に行くのにはためらいが無かった。
当時では最新のデザインだったので、未来の車を見ているかのようであった。
ある時、私が車好きだと知った先生は、ご褒美に一度だけセリカに乗せてくれたことがあった。
今でも記憶しているが、飛行機のコックピットのようなメーターパネルと道路を滑るように走るセリ
カは、映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー」に登場する車型タイムマシンのデロリアンみたいな存
在だった。
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