タケボーと犬
私は保育園に電車で通っていた。
保育園の園庭で遊んでいると、タケボーという謎の人物が散歩していた。
丸坊主に真っ黒に日焼けした顔に黄色い歯、ビニールヒモをベルト代りに腰に巻いて、ボロ
ボロの服を着ていた。
その風貌が保育園生には怖い存在だった。
タケボーが来ると皆が騒いでパニックになった。
よく犬を連れていた。
私は幼い頃から正義感が強く、先頭になってタケボーを追い払う役だった。
大きな声を出したり、時には石を投げた。
いま思えば彼には悪いことをしたと思う。
タケボーは精神薄弱者の若者だったと思うが、地元では有名人で悪さをするわけでもなく
ただ散歩するだけなのであるが、乞食のような風貌が怖がられた原因だったと思う。
小学生になってからも出没したが、怖い存在ではなくなっていた。
声をかける勇気も出てきて話しかけたりした。
高音の優しい声でボソボソと喋っていた。
小学5年生で近辺の小学校が合併し、私も新しい小学校に移ったので、それ以来タケボーに会
う機会はなくなった。
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