婆ちゃんの菖蒲湯(しょうぶゆ)と柚子湯(ゆずゆ)
我が家の風呂場が外にあり、薪を焚く風呂釜と木製の湯舟だったころ、婆ちゃんは5月になると菖蒲
を、12月の冬至には柚子を湯船に入れてくれた。
幼い時には日ごろと違う風呂になるので菖蒲湯や柚子湯が楽しくて、湯船の中で父とよく遊んだ。
現代のガスで焚くユニットバスより、薪で焚いた木製の湯船は温まるといわれているが、そこに菖蒲
や柚子が入ると、なおさら温まったような気がする。
菖蒲湯に入る起源は中国にあり、菖蒲は昔から鎮痛効果や血行促進の効果があり、病気や邪気を払う
薬草とされていて漢方薬として使われていた。
端午の節句が行われる時期は、春から夏への季節の変わり目で体調を崩しやすい時なので、この風習
と端午の節句が結びついて日本へ伝わったものとされている。
婆ちゃんは菖蒲とヨモギを束ねて軒下に吊るしていたが、日本には古来から「五月忌み」と言って菖蒲
の葉やヨモギを軒に挿し、邪気を祓う風習があり、菖蒲には防火と厄災の力があると考えられていた
ようである。
また武士が世の中の中心となりつつあった時代に、菖蒲は尚武(しょうぶ)武道を重んじるという意味
に通じることから、江戸時代に端午の節句が五節句として正式に制定されると、その風習は庶民へと
一気に広がりを見せた。
また江戸時代頃より冬至に柚子を浮かべた湯船に入浴する習慣があり、ゆず湯に入れば風邪を引かな
いと言われていた。
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