丸一商店のオジさんとウナギの肝
私の生まれた田舎は小さな村だったが店が2件あった。
そのうちの一軒は食堂をしていて、地元の人や観光客で賑わう店だった。
昔は披露宴や法事など親戚が集まる行事は必ず丸一商店と決まっていた。
食堂にある定番の料理は、だいたい揃っていて観光客に人気があるのは断トツに鰻丼だった。
村の人には人気がなかったが、料理の仕方は関西のウナギの焼き方で、蒸す工程がなく素焼きにタレ
を付けて焼く方法なので食感としては、ややしっかりめで脂が香ばしく焼けた香りを楽しむことが
できた。
休日は観光客やバイカーが多かったように思う。
私が幼いころはウナギの肝を食べる習慣がなく、丸一のオジさんは捨ててしまう肝を無料でくれたの
で、母はいつも貰っていた。
母が煮付けた肝はとても美味しくて私の好物だった。
おかげで我が家はウナギの肝を食べる習慣があって、年中スタミナをつけることができた。
父は鰻丼が嫌いだったが肝は食べていたように思う。
今ではスーパーで売っているが結構な値段なので、食べる機会が減ってしまった。
今思えば、こんな贅沢ができたのは丸一のオジさんのおかげである。
丸一商店は残念ながら後継者がいなくて、数年前に廃業してしまった。
今でも昭和初期に建てられた宴会場は残っていて、とてもいい風情を漂わせている。
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